478 オンフルールを訪ねて

先週末、フランスのノルマンディ地方にあるオンフルール(Honfleur)の町を訪ねました。
オンフルールは、パリから北西に約200キロ。
セーヌ河の河口に位置する、人口約8,000人の小さな港町です。

今日は、オンフルールを訪ねた時に感じたことを、4つお話したいと思います。

1. 素朴

オンフルールの町は、想像していた以上に小さな町でした。
出かける前には2泊したほうが良いのかとも考えましたが、1泊でも十分に楽しむことができる程の大きさ(小ささ)でした。

旧港と呼ばれる港を中心に、それを取り囲むように可愛らしい建物が並び、その間を石畳の小径が伸びています。
また、町中のところどころに時の流れを感じさせる教会や時計台、民家などが残り、その多くは木造か木骨造りの建物で、とても素朴な雰囲気です。

なおオンフルールは、河をはさんだ対岸に人口約20万人の近代都市ル アーブル(Le Havre)があり、また、2つの町を大きな橋が結んでいるため、都市機能の多くはル アーブルの街が担っていて、その反面、オンフルールの町は昔のままの姿を残すことになったような、そんな印象を受けました。

2. サティとブーダン

サティやブーダンの名前をご存知の方は多いのではないでしょうか。
西洋音楽史上、とても重要な人物であるとされる作曲家のエリック サティ(Erik Satie)も、また、印象絵画の基礎を築いたと言われるウジェーヌ ブーダン(Eugene Boudin)も、オンフルールの生まれ。

なお、サティの名前をご存知ない方でも、以下の曲はお聞きになったことがあると思います。

また、ブーダンの名前をご存知ない方でも、印象派の画家、モネの師匠だった(モネに屋外で絵を描くことを教えた)人だと言えば、その凄さがお解かりいただけるものと思います。

なお、実は僕も、サティやブーダンを良く知らなかったのですが、今回、オンフルールでサティの生家を訪ねたり、ブーダン美術館を観たりすることで、2人のことを身近に感じることができました。

3. シードル

僕はワインが好きでなので、出かけた先で地酒(その地方のワイン)を飲むのが旅の楽しみになっています。

なお、今回出かけたオンフルールの町はノルマンディ地方。
緯度が高いせいかぶどうの栽培には向かないらしく、この地方で作られるワインはあまり聞いたことがありません(探したら、あるのだと思いますが…)。

その代わり、ノルマンディはりんごの産地。
そのため、りんごから作るシードル(りんごの発泡酒)や、カルヴァドス(りんごの蒸留酒)が有名です。

なお、オンフルールの町中には何軒もの酒屋さんやお土産屋さんがあって、その店先にはたくさんのシードルが並んでいます。
また、レストランに入ってもメニューに必ずシードルがあり、その土地の料理と一緒に楽しむことができます。

今回の旅で何本かのシードルを飲みましたが、どれも個性的。
味といい、香りといい、独特な風味があります。

さらに、瓶に貼ってあるラベルのデザインといい、コルクを針金で縛っただけの栓といい、とても素朴な感じ。
いかにも、近所のりんご農家で作られた…という雰囲気です。

仮に、フランスワインが日本酒だとしたら、シードルは沖縄の泡盛のような、素朴で地方色豊かな飲み物なのかも知れません。

4. ふるさと

パリからオンフルールに行くには、電車に乗って約2時間、トゥルーヴィル ドーヴィル駅(Gare de Trouville Deauville)まで向います。
そして、駅前からオンフルール行きのバスに乗り換えて、約30分で到着です。

なお、バスの窓からは、なだらかに続く丘のあちらこちらに、りんご農家がポツリポツリと点在するような、のどかで美しい風景を見ることができます。
それはまるで、童謡「ふるさと」が生まれた、北信濃(長野県)のよう…。

さらに、バスの乗客の中にはボストンバッグを抱えた若い男の子や女の子がいて、途中の小さな村のバス停で、1人また1人と降りていきます。
きっと、週末を利用して、パリから実家のある村に(故郷に)帰って来たのでしょう。
何だかその姿に、郷愁を覚えてしまう僕なのでした。

サティ ジムノペディ 第1番