284 子犬のワルツ

近所の酒屋さんに行くと、1匹の子犬をよく見かけます。
恐らく、週に2回は会うのではないでしょうか。
しかしこの子犬、酒屋さんが飼っているのではなく、酒屋さんにワインを買いに来るおじいさんが飼っているのです。
とてもおとなしい犬なのでリード(綱)は付けられておらず、いつもおじいさんの脇にピタリと付いています。

ところが、酒屋さんの店内にいる時だけは、その様子が一変…。
酒屋さんの店員さんがワインのコルクを与えると、子犬はそれを玩具にして遊び始めます。
その遊び方とは…
店内にいるお客さんの足元にコルクをくわえて持っていき、それをポトリッと落とします。
そして、お客さんの顔をジッと見上げ、「一緒に遊んで!」とおねだりするのです。

初めてのお客さんは「えっ、何?」とキョトンとしていますが、子犬のことを知るお客さんは、そのコルクを拾い上げ、少し離れたところにポイッ!と投げてあげるのです。
すると子犬は猛スピードでそれを取りに行き、くわえて戻って来ます。

そして、何度も何度もこれを繰り返し、また、新たな遊び相手を見つけては、ひたすら遊び続けます。
もう、この遊びが始まると、いつもは静かな店内も一気に賑やかに…。
この時だけは、ショパンの子犬のワルツが流れているかのような賑やかさです。

なお、飼い主のおじいさんは、その間、店員さんと楽しそうに話をしたり、ワインを飲んだりしています。
パリの街中にある小さな酒屋さんで、1匹の子犬が織りなす、ほのぼのとした時間のお話でした。

ショパン 子犬のワルツ(Chopin, Valse du Petit Chien)