256 ガンバレ! 頑張れ!

7月の1か月間、フランス語の学校に通っています。
私が仲良くなったクラスメイトは、きれいな英語を話すカナダ人のニコルさん。
歳も近いし、仕事や趣味の話も合うので、授業の前に待ち合わせてカフェでお茶をしたり、休憩時間に中庭でおしゃべりしたり、いつも一緒。

ニコルさんは、カナダで知り合ったフランス人の彼と1年間の遠距離恋愛の末、一緒に暮らすことを決意して5月の終わりにパリにやってきたのだそうです。
そして、フランスで暮らすため、仕事を見つけるため、彼女は熱心にフランス語を勉強しています。
宿題も、小テストも、いつも先生に褒められるほどの優等生。

ところがある日、いつもは笑顔のニコルさんがちょっと落ち込んでいました。
いつもの様にフランス語で話しかけても…

「ごめん、今日はフランス語をしゃべれる状態じゃないの…」

…と。
英語で理由を聞くと、慣れないフランス生活の中で溜まったストレスで、疲れてしまったらしいのです。
彼の家族や友達(フランス人)と集まって食事をしても、会話は早口のフランス語で、自分は蚊帳の外…。
部屋探しやさまざまな契約ごとも、言葉の問題で彼ばかりに負担がかかる…。
そして、仕事も思うように見つからない…。
その上、八つ当たりしてしまって彼とは喧嘩ばかり…。

「ユコ(裕子)はいいな~、家に帰れば日本語でしゃべる相手がいるでしょ?」

私はそんな彼女に同情しつつ、元気になって欲しいと心の底から思ったのでした。

「それは仕方ないよ、最初は。自分の国を離れて外国で暮らし始めた人は、みんなきっとそうだよ。それでもニコルは恵まれてるほうだと思うよ。だって、フランス語がしゃべれるフランス人の彼が一緒なんだから。それにフランス語だってきっとすぐに上達するよ」

ニコルさんは心理学の修士課程までとって、カウンセラーの経験もある人。
こんな私の言葉が励ましになったかどうかは分からないけれど、あまり悩まないで、前を向いて、元気に楽しく過ごして欲しいなぁと思います。
そしてそれは、私自身に対しても同じこと。
みんな、大なり小なり、苦難を乗り越えながら暮らしているように思います。

ニコルさん、ガンバレー。
私、ガンバレー。
みんな、ガンバレー!