123 野も、山も

日本から、桜の便りをいただいた際に…

「ところで、フランスの春は、どんなふうに始まるのですか?」

…とのご質問をいただきました。

しかし、パリの街中には思いのほかお花が少ないので(アパルトマンの窓辺に咲く花か、公園の花壇に植えられた花なので…)、その答えに困っていました…。

そこで先日、南仏へと出かけた際に、フランスの田舎の風景をじっくりと眺めてみることにしました。

その結果、まず初めにお伝えしたいのは、新緑です。
そう、フランスの春は、野山の新緑から始まるのです。

フランスの田舎の、小さな村へ行った時、そこにお住まいの方と一緒に、里山のお散歩へと出かけた時のこと…。
遠くに見える穏やかな山々の連なりが、木々の芽吹きによる美しい緑に覆われていたのがとても印象的でした。
それは決して濃い緑ではなく、緑の中に少し白を溶かしたような、うっすらと白い緑です。

そしてその新緑の中に、ところどころ真っ白な花を咲かせた木が見えます。
これは桜の木。

なお、日本の桜は淡いピンクが多いように思いますが、フランスの、この地方の桜の花は真っ白。
地元の方のお話によると、昔の人は春の山を眺めて、白い花をたくさん咲かせた大きな桜の木を見つけては、それを切って家具を作ったのだとか。

そして、もう1つ目に付くのは、オペピーヌ(aubepine)の白い花。
道路脇や牧場の小径、家々の裏庭などにたくさん咲いていました。
飾り気のない、とても可憐な花ですが、春まだ浅い野に良く似合っていました。

なお、フランスの美しい田舎の風景を眺めながら、ゆったりと過ごす時間は本当に贅沢なもの。
そしてまた、こんなふうに春を感じることができるなんて、とても幸せに思いました。

大自然が育む、春の息吹…。
野も、山も、小川も、風も、空も、そして星までもが、まさに春一色でした。