009 ルノワールのセーヌ河2/3 船上のパーティー

Copyright:坂田 正次

ルノワールはモネと過ごしたセーヌ河畔で、セーヌ河を背景に人物画を描きます。
その1つが「船遊びの昼食(Le Dejeuner des Canotiers)」です。

船上のパーティーと日本題では呼ぶことがありますが、パリ近郊のシャトゥーのセーヌ河の中の島にあるレストランのラ メゾン フルネーズで、ヨットやカヌーなどに乗って楽しんだ後の昼食の風景を描いたものです。
フランスでの昼食を大勢で食すると、ワインボトルなどが並ぶのでちょっとしたパーティーととらえるほうがよいのかもしれません。
小さなヨットが浮かぶ背景の水面はセーヌ河です。

楽しい絵です。
描かれているのはルノワールの友人達。
船に乗って遊んできた様子の、腕っ節の強そうな人物2人がすでに昼食が始まっているテーブルに来て、会話の仲間に入ろうとしている。
振り向きながら後ろの男性と親しげに言葉をかわすふくよかな女性。
その後ろの方にはシルクハットの紳士がいて、船遊びだけではないさまざまな人々がかもしだすさんざめきの音が聞こえてくるような場面をまとまりよく描いています。

その中で、画面左すみの子犬を抱き上げて戯れる女性は、後にルノワールの奥さんとなるアリーヌ シャリゴです。
ルノワールの恋は、パリ モンマルトルでモデルをしていた美貌のシュザンヌ ヴァラドンとエッソワ村出身の素朴なアリーヌとの間で揺れ動きましたが、お針子をしていた家庭的なアリーヌを選びました。

アリーヌの出身地のエッソワ(Essoyes)はセーヌ河の上流部に位置するトロワの南東約20キロにある小さな村で、ルノワールは1885年に初めてこの村を訪れ、1895年にはアリーヌに勧められてこの地に家を買っています。
家は別荘として使用されて 1905年にはここにアトリエを建てました。

ルノワールには3人の息子が生まれ、そのうち長男ピエールは「ラ マルセイエーズ」などに出演した映画俳優に、次男のジャン ルノワールは映画監督になっています。
次男のジャンの作品には「どん底」、「大いなる幻影」、「フレンチカンカン」など著名なものがあり、映画評論家の淀川長治氏はフレンチカンカンについて「バックステージも凄い、ほかの共演者が全部凄い。お父さんは画家のオーギュスト ルノワール、その影響がよく現れています。きれいくて、きれいくて、こんなきれいな映画を見たことがない思いました」と述べています。

船上のパーティー ルノワール
船上のパーティー ルノワール