010 しなやかな口当たりのメルロー

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

今回、今までは避けて通っていたボルドーに。
なぜ避けて通っていたか…。
以前からどうも安くて美味しいボルドーにあたったことがなく(高いとあるんですけどね)、自然と足が遠のきました。
しかし、昨年からやっと縁があって美味しい出会いがあり、ボルドーもいいな、と思えるようになったのでお手頃のボルドーをご紹介しましょう。

【ボルドーは濃い? フルーティ?】

まずはボルドーと一口に言っても、大きく分けて2つのタイプがあるのです。
1つはカベルネ ソーヴィニヨン種主体のメドック地区、もう1つはサンテミリオン、ポムロールなどのリブルネ地区、こちらはメルロー種主体。

カベルネ ソーヴィニヨン種がタンニンが濃くカシスやブルーベリーの黒い果実味、苔や腐葉土の土っぽさ、植物の香りがあるのに対して、メルロー種はタンニンがそれほど濃くなく、ジャムやリキュールのような果実味が前面に出ているのが特徴です(もちろん例外はあります)。
大雑把に言って濃い方とつるつるしてる方と捉えておくと解りやすいかも。

よく贈り物にボルドーワインを、と言われて選んで差し上げる機会が多いのですが、受け取る側のボルドーのイメージだけでも探ってみるとだいぶ選びやすくなります。
もし、「ボルドーって言えば濃いワイン」と思っている方にはメドック側のボルドーを、「フルーティーなワインね」という方にはリブルネ側のメルロー種のボルドーを選んでみましょう。

【サンテミリオンの格付け】

今回はサンテミリオンなのでサンテミリオンの格付けにも触れておきます。

下に行くにしたがって格が上がっていくのですが、ここで声を大にして言いたいのがGrands Crusの文字に惑わされないことです!
よく Grands Crus だから美味しいのね、と考えていらっしゃる方が多いのですが、なんと一番下の階級のSaint-EmilionよりもSaint-Emilion Grands Crusの方が断然多いのです。
実は今まで仕事をしていて、ただのSaint-Emilionを見たことがありません(どこにあるんだろう…)。
試しに大きなスーパーに行ってワイン売り場のボルドーのコーナーを見てみても全部Grands Crus以上、摩訶不思議な格付けなのです。

【サンテミリオンの98年ワイン】

今月のワインはSaint-Emillion Cru Ch. Laplagnotte-Bellevue 98、サンテミリオンのトップの1つ、Chateaux Cheval Blancの所有者の娘さんが嫁いだ先がこのシャトー。
土壌もCheval Blancに近く、醸造のテクニックも申し分ありません。
メルロー種の出来のよかった98年ですが、このワインも例にもれず、メルローの魅力満載。

ちょっと黒味がかったクリアな紫色、香りはグリオットのアルコール漬け、バニラ、シナモンの甘いスパイスにコーヒーの程よい焙煎香。
口に含むと煮詰めたブラックチェリーのねっとりとした果実味とカカオの苦味がいいアクセントに。
タンニンもさらりと果実味の中にとけていてワイン自体の質の高さを感じます。

メルロー種は血のような鉄分を感じますから、合わせるものも血の味がするものにすると良いでしょう。
例えばマグレ ド カナー(Magret de Canard:鴨のロースト)とか。
塩コショウのみで、肉の味で勝負。
良い牛肉の赤みなどもいいです。

ちなみに気になるお値段は22ユーロ。
ちょっといいことがあった日に、良いお肉を買って乾杯!