007 スパイシーなラングドック

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

皆さん夏休みはいかがでしたか?
私は4年ぶりに日本に里帰り。
暑さと湿気の苦手な私はすっかり参ってしまいましたが、パリに戻ればもう秋の空気が、ということで、今回は秋にピッタリなラングドックです。

【ラングドックのワイン】

ワインを全く知らずにワインを買いに行くと、どうもボルドー、ブルゴーニュに偏ってしまいがちですが、腰があって飲み応えがあり、そんなに高くないというのがラングドックの大きな魅力です。
ワインを勉強し始めた頃はそんな気だての良さにはまってしまい、ラングドックばかり飲んでいた時期もありました。
昔はプラスチックに入った安酒ばかり作っていたラングドック地方ですが、80年代に入ってからいくつかのスターワイナリーの登場とともにラングドックのワインを見直す運動が出てきます。
それに伴ってクオリティーが急上昇!
手がかかれば値段も上がる、美味しいラングドックのワインはジリジリと値段を上げ続けています。

【ラングドックとは】

ラングドック地方はプロバンスとスペインの国境の間、その中のフォジェール(Faugeres)はベジェ(Bezier)の北側に位置し、急な斜面に沿った区画です。
標高300m、南部の強烈な太陽による暑さを山側の涼しい風でうまく調節しながらミネラル分の高い、濃くても飲み口の丸い、質の高いワインを生産する土地です。
ラングドックだけでなく、南のワインの大きな特徴は単一種でなく、複数のぶどうの品種を混ぜてワインを作ること。
そのため、どの品種を多く使っているのかで各ワインの性格が変わってきます(ワインを買う際は販売員さんに品種と濃さを確認しましょう、飲み方が変ってきます)。

【2001年のラングドック】

秋から冬にかけて肉料理、特にジビエが美味しくなってきます。
今回はのろジカのローストとジロル茸のポワレ、なんてイメージでワインをセレクトしてみました。
Domaine Saint AntoninのFaugeres Tradition 2001年。
2001年のワインはフランス全土どこを見てもなかなかいい出来ですが、このドメーヌも然り、素晴らしい出来です。
品種はシラー種35%、残りはムルベードル、サンソー、カリニャンの混合です。
シラー種の特徴は濃い色に濃いタンニンですが、このワインは3割程度しか使ってないないので、割と色は鮮やかな紫色。
香りはすみれのフローラルな香りにチェリーのアルコール漬け、黒こしょうスパイシーさでしっかり南部をアピール、黒オリーヴやフランボワーズの赤いフルーツの香りもして、シンプルながらも繊細で上品な香り。
口当たりはタンニンの渋さを感じないほどつるりとした飲み口で、まるで赤いフルーツのネクターを飲んでいるよう!
後味にピリッとしたスパイシーな料理とも相性が良さそうです。
サーブする前に冷蔵庫で20分くらい冷やして、キャラフがあればキャラフェも2時間ほどしてみましょう(ない場合は抜栓して2日位が香りが開いて調子が良くなります、へたらないので、怖がらずにお試し下さい)。

余談ですが、このワインを里帰りの際に大学の恩師にプレゼントすると早速電話が。
先生はパリに4年間住んでいたことがあり、ただの飲兵衛でもあなどれないワイン通、その先生が「あのワインいくら? 僕は5千円くらいかなって思ったんだけど、すごいもっと飲みたくってさ」とのこと。
先生、実は11ユーロなのです。
そんなに高くないんです。
でも日本では入手困難なので、皆さんフランス滞在中にラングドックを堪能しましょう。