004 コルシカオリジナル

Copyright:モーセルヴェ 伊藤 歩

今回は、美しいコルシカ島のワインについて。

コルシカ島はイタリアのサルデーニャ島の隣り、イタリアの文化とフランス文化の混じりあった独特の地方。
ワイン畑は島の外側をグルッと囲む様に点在し、島の中心にある山の影響と地中海の影響をうまく受けるようになっています。
つまり、太陽が暑くても気温は涼しくなるようになっているわけです。

使用品種は土着の赤、ニエルチオ(Niellucio、イタリアのサンジョベーゼと同種)、シャカレッロ(Sciacarello)、白はヴェルマンティーノ(Vermentino)。
発音からもだいぶイタリアの影響がみえるでしょう?
この土着の品種に加えて1960年以後にグルナッシュ(Grenache)、サンソー(Cinsaut)、カリニャン(Carignan)、シラー(Syrah)の南仏の品種を混合して作られるようになりました。

一般的に見て(ワインはいつも例外にあふれているとはいえ)白ワインはヴェルマンティーノを主体にして作られていますが、シャッキリとした酸と南国フルーツの強い香りが特徴で、食中よりもアペリティフ向き。
料理にあわせるならば魚介のフリットにレモンを搾って、できるだけシンプルなものと。

一方、赤ワインは土着のニエルチオ種を100%(または主体に)使ったものと何種類かの品種を混ぜて作ったもの(アッサンブラージュ)とでタイプが分かれます。
アッサンブラージュものは南仏と品種がほぼ同じなので、南仏のワインとよく似てタンニン、アルコール、旨味も濃く、たっぷりとしてパワフルな作り。

対してニエルチオのみで作ると、旨味、アルコールは濃いものの赤いフルーツの果実味、そして単一品種で作ったワイン特有の繊細さが出てきます。
私自身はこれこそコルシカのオリジナリティーではないかと思っているのですが、近年アッサンブラージュでシラーとグルナッシュの割合が増えているようで、特に60年以後に出現した島の東部の作り手にはこの種のアッサンブラージュが多くみられるようです。

【コルシカオリジナル ニエルチオの繊細さ Corse Patrimonio】

今回ご紹介するワインはコルシカ島の老舗ドメーヌ、Domaine Leccia Patrimonio 1998。
パトリモニオ(Patrimonio)は島の北部に位置するアペラシオン(ワイン原産地の呼び名)で、コルシカ島の中で質の高いものが産出される区域の1つです。

Domaine Lecciaはその中でもトップの作り手の1人。
品種はほぼニエルチオのみを使用。
色はすでにオレンジがかったクリアで鮮やかな赤。
香りはフランボワーズ ジャムの甘い香りに、白い紙のようなミネラル、苦味のあるカカオ。

口に含めば、さくらんぼのアルコール漬けにビター チョコレート、枯葉の様な熟成香もあり、全体をミネラルがキチッと支えてキレを与えています。
後味はフランボワーズのオードヴィの様な香りと苦みがふわり。タンニンもきれいに果実に馴染んで飲み頃絶好調!
非常に足の長いワインなので、ゆっくり飲んであげて欲しいものです。

【合わせるお料理は?】

豚のスペアリブのローストに野菜のグリル。
中華の甘辛味にも合う気がしますし、甘くてスパイシーなトンカツ ソースとの相性もいいので、ロースカツでもいいでしょう。

あと、忘れていけないのはコルシカの肉製品。
豚のきめが細かくて胡椒と燻製の香りがきいているのでフランスの肉製品の苦手な人にもおすすめです。
もちろんパトリモニオとの相性もバッチリ!