454 一面の菜の花

先日、パリから北へ向って電車に揺られていた時のこと…。
この季節、窓の外を眺めていると、世界が真っ黄色に染まる瞬間があります。

それは、地平線まで続く、一面の菜の花。

この国は冬が長くて寒い分、暖かな日差しの中で、視界いっぱいに菜の花が咲いているのを見ると、本当に嬉しくなります。
そしてまた「あ~、今年もこの季節がやって来たんだな~」と、とてもホッとします。

世の中には、美しい風景がたくさんあるのでしょうが、フランスの、春の菜の花畑も、間違いなく、その1つであると思います。

しかも、この風景は、人が作ったもの。
人がこの地を耕し、種を蒔いた結果として、この風景があるのです。
もちろん農業として菜の花を栽培しているのですが、そのあまりの美しさに、この風景を見る人たちを喜ばせようとしてくださったのではないか…とも思えるほどです。

なお、僕が一面の菜の花を楽しんだのと時を同じくして、飛行機でパリのシャルル ド ゴール空港に降り立った1人の女性から、先日、こんなメールをいただきました。

「ド ゴールに近づいて、飛行機の窓から広がる畑を見ると嬉しくなります。今回は5月だったので菜の花畑が黄金に輝いていました」

あの菜の花畑の中を電車で走り抜けるのも素晴らしかったのですが、彼女のように飛行機の窓から見下ろすのも、さぞかし美しかったことでしょう。
電車の窓に比べて飛行機の窓の方がより小さい分、また、窓の外の風景がより大きい分、感激も一入(ひとしお)だったに違いありません。

飛行機の小さな窓に額を寄せ、一面の菜の花畑を眺めている彼女の横顔を想像したら、僕はさらに嬉しくなりました。

なお、皆さまも想像してみてください…。

5月の初め、快晴の日の午後。
フランス上空を飛ぶ飛行機の窓から見ることのできる美しい風景を…。
傾き始めた夕日の中で、真っ黄色に輝くフランスの大地を…。