047 彼らが描きたかったもの

私が小さい頃から、父はよく、家族を美術館に連れて行ってくれました。

そして、大きくなってからも、私は美術館に足を運ぶようにしていました。

ただ、印象派がどうとか、美術史などについてはあまり興味が持てなくて、ただ単に、その色合いとか、絵のタッチとか、雰囲気を楽しんでいました。

しかし、今回、南仏プロヴァンス(Provence)を旅してみて、ゴッホやセザンヌが描いた風景を実際に味わうことが出来たことは、思いがけず大きな収穫となりました。

日差しの強さと影の濃さ、風や空気、大地の色、木や草花、建物のデザイン、そしてそこで暮らす人々の生活など…。

日本のそれとは違う風景を実際に見て、また少しでも感じることができて、子供の頃に見たゴッホやセザンヌ、ゴーギャンなどの絵と、だぶって見えるようになったのです。

彼らは、こういう風景を見て生きていたのだな、そしてその中で、あのような素晴らしい絵を描いたのだなと思うと、今までの自分がいかに絵を表面的にしか見ていなかったかということを強く感じました。

そしてまた、彼らが何を描こうとしていたのか、ほんの少しではありますが解るような気さえしてきたのです。

フランスの絵画を学ぼうとする人やご興味をお持ちの方には、是非とも見ていただきたい風景と、過ごしていただきたい時間とが、そこにはありました。