006 印象日の出 受難日誌6/8

Copyright:坂田 正次

印象派絵画盗難事件の捜査で来日したミレイユ バレストラッジ警視正は、まず藤曲信一への事情聴取を行っています。
彼女は特命チーフとなっての訪日でした。
以下は読売新聞記者との1問1答です。
新聞記者はほのかなparfum(パルファン)の香りから警視正にパリジェンヌらしさを感じていました。

「女性が訪日特命チーフとなったのは、何か特別な判断があったためか?」

「全くありません。私がコロ-作品盗難事件の捜査をパリで指揮したので当然の結果です」

「日本側との情報交換で今後、仏側の捜査が大きく前進しそうか?」

「もちろん。期待もしている。具体的には話せないけれども…」

「将来の絵の変換交渉に向けての捜査も行うのか?」

「そのとおり。日本との間にこうしたケースは過去なかったので、双方の見解をつめていく必要がある」

「ジャマンらとの背後関係は?」

「それは捜査にかかわるので話せません」

バレストラッジ警視正たちの来日による情報交換が行われた後、日仏間にまたがって行われていた捜査は早い進展をして行きます。

(日本の藤曲とフランスのジャマンたちとの出会い)
出会いというと格好がよすぎるこの絵画窃盗グループの中心的なメンバーたちが顔を合わせたのは、パリ近郊のポワシー刑務所でした。
藤曲信一が昭和53年01月にヘロインをフランスに持ち込もうとして捕まり、禁固7年の刑を受けてそこに服役していました。
ポワシー刑務所にはたまたま別の事件で服役中のジャマンたちがいて、彼らと意気投合しています。
藤曲は恩赦により刑期が短縮され、昭和57年11月に出所し、国外追放となって日本に帰国しました。
藤曲のフランス語はジャマンたちから教わったものだったのです。