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パリ発 四季折々のワイン パリ発 四季折々のワイン

No.02
強さの中のしなやかさ、ローヌ北部の王様

Copyright モーセルヴェ 歩

そろそろ寒くなってきてジビエのおいしい季節になると、恋しくなってくるローヌ北部のワイン。今回は最北のコート ロティのご紹介。


モーセルヴェ 歩
ソムリエ コンセイユの資格取得後、cafe de passage、FAUCHON、LAVINIAなどでソムリエをつとめる。

200kmにも渡る広大なローヌ地方でVienneからValence辺りまでがローヌ北部。ローヌ河右岸の最北のアペラシオンがコート ロティです。

ローヌ北部のブドウの品種はシラー種(最大20%まで白ブドウ酒のヴィオニエも使用可ですが、ほとんどがシラー種のみ)。ローヌ北部のシラー種は一般的にタンニンもうまみも濃い長熟タイプ。香りの特徴は黒オリーブ、黒胡椒にブラックチェリーの煮詰めたような香りがあるところ。黒オリーブの香りが分かりにくい方はタプナード(黒オリーブのペースト)を嗅いでいただけると分かりやすいかも。色はほとんど真っ黒で、渋ーいワインのイメージがありますが、コート ロティはブルゴーニュ南部のすぐ下に位置するため、濃い中に疲れさせない上品さ、しなやかさ、分厚いミネラルがあるのが特徴です。

一度訪れたことのある方ならご存知でしょうが、コート ロティの畑はかなり急な斜面に面しています。見るからに収穫がしにくそう。でもこの斜面があの素晴らしいワインを作るのです。河のそばの肥沃な土地ではいいワインはできません。ワインの木の根っこが栄養を求めて深く張らないといいワインはできないのです(肥沃な土地では根が土地の表面に張ってしまう)。コート ロティでは作り手のレベルが平均して一番高い地区だと言われています。非常に小さな地区で生産量も限られているため各ワイン屋はどうやってコート ロティを買い付けるかで頭を悩ませるのです(コート デュ ローヌ全体の生産地5万9千ヘクタールに対して200ヘクタール)。

かくいう私はコート ロティ好き。職業柄”一番好きなフランス ワインは?”との質問を受けますが、迷わず”コート ロティ”と答えてしまう程。ある日飲んだコート ロティがワインのワの字も知らなかった私にワインのパッションを与えたのです。

私の人生まで変えてしまったコート ロティを作ったのはCluzelRoch.Gillbert Cluselと彼女の奥さんBrigitte Rochの3ヘクタールの小さいドメーヌです。

コート ロティの中でもいろいろタイプがあり、オリーブの香りの強いタイプのもの、果実味によった上品なタイプ、どちらも程よいけどテクニックの見える冷たい印象のもの。それらの中で彼らの作るコートロティは豊かな果実味に加えて濃い上品なタンニン、口当たりはピュアで強さの中にしなやかさがある洗練されたものでした。”こんなおいしいワインって存在したんだ”と目の覚めるような衝撃を受け、もっと知りたいが嵩じて現在に至ります。その後何度か顔を合わせる機会はあったものの、何となく恥ずかしくてその時の感動は作り手には伝えていません。皆さんが同じものを飲んで同じ印象を受けるとは限りませんが、人生を変えてしまうワインってあるんです。

このコラムは、在仏日本人会発行の会員向け新聞に掲載された記事を、許可をいただいて転載しています。



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