029 ノートルダムの桜

夕方、ふらりと散歩に出た。

と言っても、時刻はすでに午後8時を回っている。
パリにもようやく春が来て、日の入りも随分と遅くなった。

パンテオンから坂を下り、サンジェルマン大通りを横切ってその先の小径を抜けると、セーヌ河に往き当たる。
ノートルダム寺院の脇には何本かの八重桜があって、花ももう終わろうとしていた。

春はあっという間に訪れて、そして、あっという間に去っていく…。

夕暮れの時が近づいて、気温も少し下がってきたようだ。
河岸に沿って吹く風に桜の花びらがちらちらと舞い、川面の上に落ちた。
そして、ゆっくりゆっくりと、セーヌとともに進みはじめた。

パリ ノートルダム寺院の桜